エネルギー問題から見たEV

1 2月

先の記事「EVのエネルギー効率」では、EVと内燃機関車を同じ土俵で評価する為に石油1単位当りの仕事を比較してきました。しかしこれは「もし100%火力(石油)発電で発電たら」というEVにとっていささか不利な条件での比較です。それでも勝利したのだから、EVはマシンとして優秀だと言えるでしょう。

発電色々、需要も色々

ただこの比較は(一生懸命書いといてなんですが)、省エネを語る上であまり意味はないでしょう。 なぜなら、石油を使った発電は日本で13%、全世界平均では5.5%しかないからです。http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/shuyoukoku/sw_index_03/index.html

一番多いのは何と石炭発電。中国やインドは6-7割と傑出していますが、先進国でも4割以上の国が結構あって、全世界平均で4割程度になっています。地球温暖化の観点からは「石炭だと?CO2を出しまくってけしからん!」という話になりそうですが、豊富にあって安く手に入る石炭の使用をすぐに止めろと言われても難しいでしょう。

何かと問題になる原子力発電は、良くも悪くも世界的に見ればごく一部。最近、何故か貧しい国でも原爆を持つようになりましたが、原発に関してはまだまだ金持ちの兵器、じゃなくて道具です。さらに風力、太陽光と言った「再生可能でクリーン」な発電は、正に風前の灯火と言いたくなるほど微々たるものです(2.8%)。

大分脱線しましたが、これらの発電は何もEVを走らせる為にやってる訳じゃありません。電車とかオフィスや工場や家庭の電気製品・・・。今走ってるEVといえば、中華電気スクーター位で4輪EVはまだまだこれからです。 しかも今後、新興国を中心に電力需要が拡大するでしょうが、それはEVが増えるからじゃなくて、快適な電化生活を送る人が増えるからです。

なので、EVが増えた事により、どのような発電がどの程度増えるか?については正直判りません。 ひょっとしたら増えないかも知れません。例えば夜間の余剰電力でEVを充電したら増えません。その意味では、EV(特に4輪)の充電は夜間自宅で行うのが基本で、もし急速充電器がそこら中に出来て昼間から大勢が充電し始めたら、火力発電の稼働率を上げる羽目になるかもしれません(この話は別の機会に)。

要するに電力というエネルギーのフォーマットは非常に汎用性が高く、様々な用途に使われている為、EVもその1つとして紛れ込ませる事が可能なのです。また、電力を作る方法も多様なので、環境、経済そして政治の問題を考慮して、その時代と地域にあった発電方法を採用することができます

石油文明が終わるのは石油を採り尽くしたからではない

電力は様々なものから作れますが、ガソリンや軽油は石油からしか採れません。逆に、石油の用途の中で一番使用量の多いのは自動車の燃料(35%)です(JOGMEC「石油ライブラリ」)。つまりICEと石油は相互関係が強いのです。

石油枯渇問題は70年代から言われており、狼少年のような扱いになっていますが、本当のところあと何年もつのでしょうか?最新の調査では採掘可能年数は全世界であと53年(OPEC諸国で88年、その他で27年)となっています⇒今日の石油産業(8P)。さらに、その上の7Pで「大規模な開発技術が更なる進歩を遂げ、これらの資源がすべて採掘可能となれば、石油資源が枯渇することは考えられません。 」と石油連盟は豪語していますが、果たしてそういう問題でしょうか?

よく「石器時代が終わったのは石を採りつくしたからではない」といわれるように、 石油がエネルギー源としての使命を終えるのは、それを採り尽した時ではなく、 他のエネルギー源に対してコストや機能面で競争力を失った時です。採掘が難しい場所にしか石油が残っていない状態になれば、技術的には採掘可能でも採算が合わなくなります。つまりその時点で石油の役割は終わる事になります。

もっとも、そうなったらなったで、別の燃料が利用されるだけです。手っ取り早いのは天然ガス、バイオエタノールなんかは内燃機関にほぼそのまま使えます。いよいよ輸入に頼れなくなったら、日本近海に豊富似存在すると言うメタンハイドレートの採掘が実用化されるかも知れません。

何れにせよ、内燃機関と言ってもガソリンエンジンに拘る必要はないわけで、コストをかけてガソリンHVなんかを開発・製造するより、エタノールやLNG車を作った方が簡単かつ省エネかもしれません。

ただし、多様な燃料を供給するにはインフラ面で問題があります。採算が合わなくなって従来のGSが廃業に追い込まれる今日、新たにバイオ燃料や天然ガス(LNG化設備が必要)供給網を構築できるとは思えません。と言う事は結局、一次燃料は多様で良いが末端に供給するのは電気が合理的なのです。

石油をめぐる地政学的リスク

しかし、石油の採掘難易度云々以前にもっとリアルな危機があります。産油国の政治情勢です。日本は原油の9割り近くをOPEC諸国から輸入しています。 しかもこれは一国が輸入する量としては、世界的に傑出しています(米国の5倍、全欧州の1.5倍)⇒国内石油需給動向(12-14P)

正に今、チュニジアの政変を発端とするエジプトの民主化運動が起きて大統領が即時辞任に追い込まれました。この民主化の動きは他のアラブ諸国に飛び火するかも知れません。

これまでアラブ諸国の殆どが独裁者か王族による先制政治でしたが、これらは概ね西側先進国にとって都合の良い体制でした。しかし、アラブ諸国が民主化されると言う事は、イスラム的民族主義⇒反米⇒反西側先進国⇒反外国(非イスラム圏)路線が考えられます。中東でも比較的自由だったエジプト、UAE、 カタールなどは民主化しても海外との安定した関係を維持できるかも知れません。しかし、例えば戒律の厳しいサウジや荒くれ者のイエメンなんかの現体制が崩れたら、第二位のアフガンになるかも知れません。

もっとも、過去にもこうした中東動乱はありました。湾岸戦争、ホメイニ革命、中東戦争・・・その度に石油危機が叫ばれ、喉もと過ぎると熱さ忘れるという事を繰り返してきました。今回も同じで、そのうち騒ぎが収束し、また元の平和と安定した石油供給が戻って来るのでしょうか?

私は今回の動きは今までのとは少し違うように感じます。今後も小さなアップダウンを繰返すでしょうか、大きなトレンドとしては右肩上がりで危機が増す⇒原油が高くなるように思います。 理由は:

  • 過去の動乱の当事者は1カ国か2カ国だったのに対し、今回の動きは中東全体に広がりそうな勢い。
  • 経済のグルーバル化が中東にも押し寄せ、インフレと失業率の高止まりをもたらす⇒社会不安⇒暴動
  • 中国やインドなどの巨大新興国の成長により、今後エネルギー需要が益々増大する。
といったところです。

勿論、EVを多少増やしただけで、これらの問題が片付くわけではありません。しかし、傑出して中東原油に依存する日本で、 少しでも石油消費量を減らそうという試みはムダではないと考えます。

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