超小型モビリティーについて考える

3 12月

このサイトでも新規格ミニカーとして何度か触れましたが、国交省が超小型モビリティー制度策定に先立ちパブリック・コメントを募集しています。今回はこの制度について考えてみました。

超小型モビリティーの問題点

超小型モビリティーの予想スペックと、他の小型モビリティーのそれとを比較したのが次の表です。

法定最高速度 実用航続距離※1 乗車定員 積載能力※2 価格
超小型モビリティー 60km/h? 40km 2 15? 70万円~?
電動アシスト自転車 20km/h 20km 1 5~15(コンテナ付き) 8~15万円
原付1種 30km/h 30km 1 5~15(業務用) 10~23万円
原付2種 60km/h 60km 2 5~15(業務用) 18~30万円
軽自動車 100km/h 100km 4 100 80~150万円

※1:ユーザーが最低限求めるであろう距離

※2:後席を格納した軽自動車を100とする

こうして見ると、速度も定員も行動半径も原付2輪と変わらないのに価格は2倍以上します。これでは、他の乗り物と比較して超小型モビリティーを選ぶ人は非常に限られるでしょう。

ではここで、国交省の資料に沿って超小型モビリティーの問題点を詳しく見ていきます。

コミューターとして

まず、想定される使用環境として「5キロ圏内の日常的な交通手段」とありますが、これは余りにも短すぎます。片道5kmと言えば、多くの人は電動アシスト自転車を選択する範囲です。通勤の足となる電動スクーターなら片道15km(航続距離30km)は走らないと売れないと言います。なので4輪ならそれ以上、例えば40km程度走れないと市場性はないでしょう。

そこで航続距離40km走れるようにすると、今度は別の問題が生じます。その距離だと住宅地や山野を出て、そこそこ交通量がある幹線道路を走ることになります。そうすると、その遅くて小さな乗り物を他の車が追い越そうとするでしょう。それは抜く側にとっても抜かれる側にとってもリスキーです。基本的に回りのクルマの流れに乗れない乗り物は危険です。ですから、最高速は80km/h程度に規制したとしても、そこに至るまでの動力性能は軽自動車と同等であるべきだと考えます。

また、通勤用に家から駅まで(場合によっては駅から職場まで)の区間だけ超小型モビリティーで移動するという使い方も提案されています(パーク&ライド)。しかし、2輪の駐輪場でも一杯なのに、駐輪場駅周辺や職場周辺に小さいとは言え4輪の駐車場を確保出来るケースは非常に稀だと思います。

宅配業者の小口配送用

例えばコムスのリアボックスは見た感じジャイロキャノピーの3倍(容積比)位でしょうか。原付バイクと同じ最大積載重量30kgの縛りは超小型モビリティーでは解くとしても、パワー的にも安定性的にも80-90kgが限界だと思います。また、車内に荷物を置ける(置いたまま駐車できる)というのが、4輪車のメリットの一つですが、オープンキャビンを前提にした超小型モビリティーではそれができません。

現在宅配便では、小口配送なら電動アシスト自転車(時にコンテナ牽引)を使っていますが、歩道を通れるので細い路地などではかなり有効でしょう(おまけに税金がかからない)。その上の車両は、原付バイクを偶に見かける程度(宅配ピザはジャイロキャノピー)、その上は軽トラック/バンです。超小型モビリティーは原付より少し上のクラスとなりますが、車両価格の割に積載量が少なく費用対効果の点から宅配業者が超小型モビリティーを選ぶとは思えません

セブンイレブンがコムスを使った宅配サービスを始めましたが、これは新しい乗り物を使って環境意識のアピールしたいとか、宅配専業ではないので宅配効率自体はさほど問題にならないケースだからと考えられます。

観光地でのレンタル

観光地での貸し出しも、走行距離5~15km程度なら電動アシスト自転車~電動原付バイクで済むでしょう。逆にもしもっと距離を走りたいとか、2人以上で乗りたいとか、荷物が大きいのであればタクシーやレンタカーを利用するのが普通です。宅配業と同様に、費用対効果の点から超小型モビリティーを選択するレンタル業者は少ないと考えられます。

パッシブセーフティー

「超小型モビリティーは速度が低いので安全基準を緩和できる」という理屈には疑問を感じます。単独での事故ならともかく、相手のある事故では自分の速度だけではダメージは測れないからです。例えば、ドアがないので側面に普通車がぶつかってきたら乗員へのダメージは計り知れません。実際にコムスを扱っているある販売店では、危険なので試乗客は勿論スタッフですら目の前の幹線道路で乗ったことがないそうです。

また、2輪車と違ってヘルメットを被っているわけでもないし、転倒時に車体と乗員が分離して衝撃を分散する事も出来ません。そういう意味では2輪車よりも危険な乗り物になり得ます。

さらに「安全基準を緩和すればコストが下がり、価格を押さえられる」という理屈も怪しい。ユーザーが危険を感じる超小型モビリティーがさほど売れるとは思えません。売れなければ量産効果で価格を下げることも出来ません。

以上から、衝突安全基準は軽自動車と同じものを適用すべきだと考えます。

アクティブセーフティー

トレッドが狭い割に重心が高いマイクロカーは、乗り心地とロール剛性のバランスを取るのが非常に難しい筈です。コムスに試乗しましたが(レポート)、路面の凹凸で車体が左右に揺さぶられるので、60km/hも怖くて出せない感じです。Twizyのサスはかなり硬いといいますが、それはそれで乗り心地が悪いし、あまり固いとロードホールディングにもマイナスです。

本質的に重心が高いのに2輪車のように傾けることができない狭小4輪車は不安定です。勿論、トレッドに合わせて車高も下げればバランスは取れますが、それだと乗り降りがしにくい/他の車から見えにくいといった問題が出てきます。個人的にはそうしたレーシングカート的な乗り物の方は好きですが、一般受けする商品ではないでしょう。

価格・装備・商品性

鉛電池搭載のコムスの価格は、67万円~80万円近くします。しかも、キャンバスドアは全てのグレードでオプション扱いで55,000円もします。リチウムイオン電池搭載のTwizyは車体価格が90万円からで、しかも電池は別料金(リース)です。ベーシックな軽自動車が70万円台で買えるのに、まともなドアもエアコンもなく速度も遅い乗り物にこの金額を出す人はかなり珍しいでしょう。

量産効果で安くなるかどうかは鶏と卵的な問題ではありますが、仮に売れ行きが今の5倍になったところで80万円のコムスが50万円(多くの人が買っても良いと思うレベル)に下がるかどうかは疑問です。

認定制度について

型式認定の申請を出すのはメーカーではなく自治体という事のようですが、この意図が判りません。例えばスズキが超小型モビリティーを開発したとしたら、全国の自治体に頼んで夫々の自治体から申請を出してもらうのでしょうか?また、ある地域だけで認定された車両が中古市場で流通して別の地域で使われる場合、新たに型式認定が必要なのでしょうか?このように、ただ手続きが複雑になっただけで、メリットが見いだせません。

そもそも、クルマの行動範囲を(GPSなどを使って)ある地域に限定するという発想が理解不能です。認知症の老人などが徘徊しないように監視するって事でしょうか(^^ゞ 県境付近に住んでる人が隣の県に買い物に行けないなんてことになると、最早パーソナルモビリティーの世界ではありません。

30km/h以下に限定

制限速度30km/h以下の道路だけを通って用をたすという状況は想像しにくいですが、仮にそういう用途に限定するなら、それはもう屋根付きシニアカーの世界でしょう。であれば、歩道を走れないと需要はないと思います。何れにせよ、60km/hで走れる乗り物と同一カテゴリとして扱うには無理があります。やるなら、新規格介助車のような全く別のジャンルとして企画すべきだと思います。

現状のモビリティと対策案

こうしてみると、超小型モビリティーは;

  • バイクと同程度の人と荷物しか運べないのに、バイクより嵩張るし遥かに高価。
  • バイク並に(あるいはそれ以上に)危険なのに、バイクほど自由がない。
  • 軽自動車と比較して定員は半分でドアもエアコンも無く高速道路は走れないのに、車両価格はさほど変わらない(税金も軽は安いので大差なし)。
  • 自治体を通しての認定は不要な手続きが増えるだけ(特にメーカーにとって負担)。
  • 運用地域が特定の自治体に限定されるような乗り物は、最早パーソナルモビリティーとは言いがたい。

正直言って普通の人がこういう商品を選ぶ理由が見当たりません。強いて言えば、2輪車に近いサイズで屋根付き、低速で転倒しないというのが売りでしょうか?こうした市場があるとしてもかなりニッチだろうし、そのそも似た性格の乗り物としてミニカーや2輪扱いの3輪車、あるいは側車付き2輪扱いの3輪車などが既にあります。

もっとも、現行ミニカーは非力すぎるし側車付き2輪は法の抜け穴状態なので、これらを統合して新カテゴリーとするなら意味はあるかも知れません。しかし、現状をそのままに新たに超小型モビリティーを追加しても、超マイナーなカテゴリーがさらに増えるだけです。

というわけで超小型モビリティーの企画には、一般消費者のコスト/バリュー感覚や、他のカテゴリとの比較及び整合性という視点が欠けているように思います。

私の提案する新規格ミニカー

私の基本的な考え方は、新自動車税制と新ミニカーという記事に示したとおり、現行の軽自動車枠を拡大しその下にパーソナルモビリティー(ここでは「新規格ミニカー」)を設定するというものです。これはまず、次のような問題意識から来ています。

現状の問題点

  1. 現行の軽自動車規格は排気量と車幅だけが小さく、高さ/重量/価格は肥大化しすぎている。また実用燃費もコンパクトカーと変わらない
  2. その一方で、税金や高速道路料金だけがリッターカーより格段に安い。
  3. カーメーカーにとっても、日本でしか売れない軽自動車の開発は資本効率が悪い。よって1L程度のグローバルスモールとして一本化すべき。
  4. 大半は1人乗り(または2人)で運用されているのに、4-5人乗りの乗用車はエネルギーの無駄。
  5. 増加中の高齢ドライバーは車両感覚が衰えているので、必要最小限の車両サイズが好ましい。

また、EVで問題になるのはご存知「定格出力」です。「定格」とは基本的には連続走行可能という意味ですから、定格出力は幾らでも低く見積もれます。例えば最大10kWで定格運転できるモーターは当然2kWなら楽々定格運転が出来ます。だから「定格2kW」(^^)これが「定格マジックです」。

超小型モビリティーが「125ccエンジン相当」であれば、原付2種との整合性からモータなら定格1kWにならないとおかしいです。しかし1kWで400kgもある車体をドライブできる筈もありません。ホンダのコンセプトカーを見ると、実質は15kW程度のようです。だから私はこうした無意味な定格出力規制はやめて、重量/サイズや最高速あるいはバッテリー容量で規制すべきだと思います。

税負担の考え方

次に税負担の重軽は何によって決めるべきでしょうか?乗員のガマンの度合い?・・・な筈はありません。税負担は環境に与える負荷の大きさで決めるべきだと考えます。

ただ、環境と言っても地球環境のような大きな話ではなく、もっと身近な周辺の環境・・・大気汚染や騒音そして道路インフラや道路交通に与える負荷の事です。これらの環境負荷を決定する車両側のファクターは次のようなものが考えられます。

  • 車両重量:重いほど道路に与えるダメージや衝突時に相手に与えるダメージが大きい。
  • 速度:速いほど道路に与えるダメージや、衝突時に相手に与えるダメージが大きい。ただし、遅すぎても交通の流れを妨げる。
  • 車両の専有面積:停止時であれ走行時であれ、専有する面積が広いほど道路という公共インフラに対する負荷(利用量)が大きい。
  • 車両の高さ:高いほど周りの視界を遮る。建築物と同じで容積率も規制すべき。
  • 有毒ガスの排出:法律で上限は規制されているが、それを下回った度合いに応じて税負担を軽減すべき。
  • CO2の排出:燃料消費率によって決まるので、燃料に課税するのが合理的。モード燃費は現実との乖離が甚だしいので、エコカー減税的なものは廃止。
  • 騒音:規制値以下であっても、走行音の大小で税額を変えるべき。

新規格ミニカースペック案

以上を踏まえ、現行の軽自動車規格や他のミニカー的なクルマと対比しながら、新規格ミニのスペックを考えたのが次の表です。

新規格ミニ規格案
全長 全幅 全高 排気量 重量 最大出力 最高速度 定員 価格
現行軽自動車 3.40m 1.48m 2.00m 660cc 規定なし 64ps? 規定なし 4 売れ筋は120万前後
新規格ミニカー 2.70m 1.48m 1.50m 600cc 600kg 規定なし 120km/h 2 70万円前後希望
ルノーTwizy(参考) 2.337m 1.191m 1.461m 450kg 8kW 80km/h? 2 90-100万円
(電池は別途リース)
マーレーT25(参考) 2.4m 1.3m 1.6m 660cc 575kg 38kW 145km/h 3 75万円
スズキツイン(参考) 2.735m 1.475m 1.450m 660cc 600kg 32kW 不明 3 88万円(ガソリンB)

まずコンセプトはパーソナルモビリティーなので定員は2人とします。他のスペックはこれを前提に考えます(主に現行軽自動車と比較しながら)。

全長については現行軽が想定的に長めなので短縮しますが、ホイールベースが余りに短いと走行安定性を欠くし、前後衝突安全上もある程度の長さな必要です。よって、現行軽より座席1列分(約700mm)短い2.7mとします。

全幅については現行軽枠の中では相対的に短かく、アンバランスの要因になっています。短すぎるトレッドは走行安定性を欠きますし、室内空間を最大限とる為にドアが薄くなり、質感や安全性にとってもマイナスです。よって、新規格ミニの全幅は現行軽と同じにしました。

現行軽枠の全高2.0mという数値は突出して大きな数値で、走行安定性の点からちょっとあり得ないレベルです。実際にはハイト系の車種でももっと低い値ですがそれでも充分腰高なので、安定性に加えて重量増の弊害ももたらしています。よって乗車姿勢及び頭上スペースとして適当と思われるツインと同等の1.5mとします。

排気量については現行軽と殆ど変わっていません。小さめのエンジンを速く回して出力を得ようとすると、かえって燃費が悪化するからです。現行軽はそういう傾向にあるので、新ミニカーでは現行軽よりわずかに小さい600ccとしました。但し過給器付きはこの限りではありません。過給は実質的な排気量アップなので、約3割増とみなします。1.3を掛けて600になる数値を丸めて450ccを過給エンジンの上限とします。

一方EVについては何も規定を設けていません。これは上述の定格出力規制の問題に加えて、後述の最大重量規定によって電池容量が制約を受けるため、現実にはそれほど高出力のモーターを積んでも意味が無いからです。

最大重量規定を設けたのは、上述の重すぎる「軽」の問題意識からです。昨今の軽は800kg前後ありますが、新企画ミニではツインと同じ600kgとします。ただし、この重量はバッテリーを積むEVと平等な比較をするため、エンジン車ではオイルは規定量入れガソリンを満タンにしたフル装備重量と定めます。そうすると600kgという上限値は、EVは勿論エンジン車でも簡単に達成できる数値では無いでしょう。しかし、重量は環境負荷のみならず燃費(電費)と動力性能にも効く重要なファクターなので、目標として高目の設定としました。

さて最後の最高速度は120km/hになっています。実はこれを書いていくうちに、新ミニカーも高速を走れるようにすべきだと考えるようになったからです。なぜなら、加速性能は他の車と同等にすべきと上で書きましたが、そのために必要なパワーを確保すると結果的に最高速も出るからです(EVなら通常は固定減速比なので、そのギア比次第で加速か最高速かの2車選択になりますが)。

しかも、上述の通り安全基準も軽自動車同じとすれば、機能的には充分高速道路を走れます。なのにそれを禁止して態々商品性を下げるような行為は無意味です。また、小さな乗り物で遠出をしてはいけないという理由もありません。250ccバイクでもツーリングをするわけですから。

という訳で、私の提案する新規格ミニは言うなれば定員が半分の縮小版軽自動車です。これまでの市販品では、スズキのツインが最もこれに近いかも知れません(但し値段はもっと下げるべき)。つまり、定員が半分になっただけで移動の自由度は同じ。燃費は向上し、軽の部品と共用できるのでコスト的にも有利というのがポイントです。

また、私が提案するするように軽自動車枠を拡大すると、新ミニカーとの差は広がるので(サイズも排気量も税金も)、カテゴリーの住み分けとしては明確です。逆に超小型モビリティーでは間が開きすぎてしまいます。

Share me! --->Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です